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ねむい季節

今の季節はねむいですよね

おそ松さん 第17話 十四松まつり は、実は本物の十四松が出ているわけでは無い!?

アニメ

おそ松さん #17 十四松まつり、すごかったですね。
でも、違和感がなかったですか?そう、「十四松と概念」。
インサイドヘッドの抽象概念のトンネルのように、どんどん観念的な概念としての十四松が掘り下げられていく話が違和感バリバリだったという話ではなくて。

屋根の上で十四松が「兄弟のモノマネ」をすることで、十四松とは何かを探していく過程の部分。一松だけモノマネされていない。全てはこの些細な違和感から始まりました。

つまりあの十四松は、本物の十四松では無いのでは?
あれは、一松の考える十四松なのではないか?
そう考えると、十四松まつりに筋が通ります。

以下、ネタバレを含むので、「十四松まつり」を観てからにしてね。

オープニング

野球ユニフォーム姿の十四松の山車燈籠を引き回す佞武多行列が、おそ松たちの前を通る。
提灯には十四祭の文字。兄弟が十四松まつりを眺め、そして、十四松になる。

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図1. オープニング内、十四松まつりに参加するために十四松になる兄弟たち*1

つまり、このシーンは、「兄弟たちが十四松になって、十四松まつりに参加している」という明示です。*2
まつりとは、誰かをみんなで眺めるものではありません。それなら十四松パレードになってしまう。
お祭りは、皆が参加するからお祭りなのです。

十四松と爆弾

一松刑事とトド松助手がイヤミビルディングの屋上で爆弾処理班を待っているが、対爆スーツに身を包んだ十四松が現れて爆弾を銃撃し爆破、一松トド松が吹っ飛ばされて、壁にめり込む十四松。*3
ここからは、サブタイトルの色に注目して見てみましょう。

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図2. サブタイトルはオレンジ。「十四松と爆弾」

オレンジですね。一番近いのは長男おそ松。
ここで描かれるのは、「独自の判断基準で物事にあたり、兄弟が巻き込まれる(自分も巻き込まれる)」という十四松です。十四松はほとんど語らず、外側からもよく見えない。
つまり、「十四松ってなんかよくわかんないよね。考え無しじゃないんだろうけど」というおそ松の願望が示された世界になっている。

十四松と夜食

深夜1:36頃に、腹が減った十四松のもとにおそ松がこってりしょうゆのCUP NOOOODLEを持って現れて二人で食べようとするが、お互い3分待てずに食べようとしてしまうので自分たちを縛ってしまい3分後にびったんびったんする十四松。
サブタイトルの色は、ミッドナイトブルー。近い色は、次男カラ松。

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図3. サブタイトルは深い青。「十四松と夜食」

ポイントは、十四松は待てと言われれば待つし、おそ松兄さんとちゃんとツッコミを入れるところ。
きちんと掛け合いになっているところに、普段からおそ松に無視されがちなカラ松の願望が多少なりとも入っているのではないか。*4

十四松とコミケ

チョロ松は、コミケの14aで既刊・新刊ALL¥500でBL*5を頒布する十四松を発見する。キャッチャー総受け*6、外角受けの変化球攻め*7、カップリング*8、リバ可なら*9、スーパー攻め様*10などの頒布本の紹介を受け、チョロ松はスイッチヒッター本を求めるが同担拒否する十四松。
サブタイトルの色は緑。つまり三男チョロ松。

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図4. サブタイトルは緑。「十四松とコミケ

チョロ松は、十四松のことを良く知らない。だから、自分の想像できる範囲で十四松を想像する。
その結果、自分の良く知っているコミケに十四松を登場させる。
チョロ松の想像する十四松とは、野球が好きな弟というだけ。
だから、チョロ松がツッコめる野球情報しか出てこない。*11

だから最後の同担拒否とは、チョロ松を十四松(チョロ松の想像する十四松、つまりチョロ松)が拒否しているという、自分で自分を拒否するというオチになっている。

十四松と移動

玄関前で遅刻するとしきりに急かすカラ松だが、間に合う間に合うとのんびり出てくる十四松。走ろうとするカラ松を掲げあげて投げ、上に乗って飛行、パチンコ店前の花輪に突っ込んだカラ松を横目にパチンコ屋に入っていく十四松。
サブタイトルはピンク。たぶん末弟トド松。

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図5. サブタイトルはピンク。「十四松と移動」

漫画ドラゴンボールの桃白白(タオパイパイ)の石柱投げ*12のような移動シーン。

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図6. 「十四松と移動」内、十四松のカラ松投げ

十四松に対してなんだか良くわからないという気持ちを持つトド松の気持ちが出ているようないないような……
カラ松がサングラスをしていないのは珍しいですが、全体的に十四松まつりは、ニートたちの個性をあえて出さないようにしているように見えます。

十四松とヒミツ

カラ松は、十四松にアメを渡しながらパチンコで勝ったことを隠してくれるよう頼み込む。ただいまの後に何度も間違える十四松に詰め寄るカラ松の後ろから兄弟たちが帰ってくるが、トド松が状況を察して十四松に詰め寄る。カラ松とトド松の間で板挟みになり混乱して頭からパチンコ玉を止めどなく溢れさせる十四松。
サブタイトルは青。つまり、カラ松。

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図7. サブタイトルは青。「十四松とヒミツ」

まずカラ松はパチンコで勝って登場する。『今日はやたらとヴィーナスが微笑みやがった』というセリフにも、きちんと十四松に突っ込んでもらえる。これは、普段から何か言っても兄弟にスルーされる(そしてそれを悲しく思っている)カラ松の「話を聞いてほしい」という願望が現れている。(しかし、別に聞かれても考えていないので誤魔化している)
ここでの十四松は、話を聞いてくれる素直な可愛い弟だが、期待した結果にはならない。
トド松との間で板挟みになって混乱するという、常識的な「可愛い弟」像に収まっている。
結果が予測できないだけで、根は素直な良い子であるというカラ松の想像する十四松像が表現されている。*13

十四松と概念

屋根の上で十四松とは何かを一松に問う十四松。十四松たる外見、動き、声を変えてみることで深みにハマった十四松は、ついに文字だけに世界を変え、そしてこの世のちっぽけさを知る。「十」の十四松の前に「一」の一松が現れて、二人はぶつかり合って消える。
サブタイトルは紫。つまり、一松。

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図8. サブタイトルは紫。「十四松と概念」

屋根瓦の上でひなたぼっこをしている一松と十四松だが、これは「一松の考える十四松」と「一松」との対話であり、つまり「十四松とは何なんだろうか」と一番深く考えている一松らしさのでた「俺が十四松だなと思うのは口だ。じゃあ口を閉じたら?一本だけ立ってるアホ毛もある。アホ毛も無かったら?見た目が変わったら?声なら?つまり十四松とはなんなんだ?」という一松の深く内にこもる話。
だから、一松だけモノマネされない。なぜなら、「十四松と概念」に出てくる十四松は、「一松の考える十四松」だから。一松は自分を客観視できない。直視できないという言い方でも良い。だから、自分で自分のモノマネをする*14事ができなかった。ハッスルハッスルという掛け声にしても、他の兄弟達が自然な発声の中、一松だけ妙に潰れた声になっている。自分の声を自分で聞くと変に聞こえるというのを、アニメとして表現すると、そうなったのでは無いだろうか。

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図9. 「十四松と概念」内、考えすぎで浮く十四松

当初は、十四松本人が変だという形で話が進むが、人はその人単体で存在するわけではないので、十四松が変ということを表現すると、当然周囲に影響を及ぼしていく。浮かび始めたところから世界が崩壊していく。

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図10. 「十四松と概念」内、ちっぽけな存在として消されるみなさん

この回で、イヤミやトト子ちゃん、Mr.フラッグまで概念として出て、ちっぽけ*15だとして画面から消されて真っ白になっていくにも関わらず、消される中に一松は含まれていない。

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図11. 「十四松と概念」内、一(松)と、十(四松)

また、「十四松」という単語の状態では一松は出てこないが、「十」という身軽な状態になってから、「一」として出てくる。これは、十四松と吊り合う状態になってからひょっこり出てきたいという一松の願望が出ていると言えるのではないだろうか。(相手と釣り合う状態でなければ名乗りをあげられないという一松の鬱屈したものがそこに表現されているようにも思う)
なお、よく見ると十四松と一松の地面の高さが違い、一松のほうが高い位置にいるようにもみえるが、これは単に+と-の記号の位置合わせの都合であって、一松のほうが立場が上という意味では無いと思う。どちらかと言えば、十四松から『ぼくたちってなんなんだろうね?』と問いかける二人の関係性の密度のほうが重要だろう。*16
最初に中座する一松が『みんな!居ないの!?』と叫んでいるのは、正しくパニックに陥っているとも言えるし、俺だけが一松の異変に気がつくことができるという自負の裏返しかもしれない。

十四松と手術

手術は嫌だと看護師トト子を困らせながら泣くトド松。そこに笑顔の十四松が現れて自分は十四松だと名乗る。バナナを食べ素振りをし、トド松のベットですやすやと眠る十四松。
サブタイトルはピンク。つまりトド松。

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図12. サブタイトルはピンク。「十四松と手術」

この回の十四松は、かなり大人しい。表面的な立ち居振る舞いは、むしろお兄さんと言って良い。
トド松がその愛くるしさを遺憾なく発揮できる「手術を待つ不安げな子供」という立ち位置であること、兄である十四松が兄らしく振る舞うこと、それでいて会話が噛み合いながらも意味が通じずに勝手な行動を取ることが、トド松の思いをストレートに伝えている。
対話単体では噛み合っているが奇妙なことになるのは、十四松がひとつ前の自身の発言を忘れいているから。つまり、トド松は十四松のことを、その場その場では聞かれたことにそれっぽく応答するが、全く前後の脈絡を把握できない人物として捉えていることが判る。

十四松と研究

老人となったおそ松博士が作ったなんだかわからない薬を十四松助手が飲むがさっぱりわからない。最初から消える能力を持っていた十四松が消え、おそ松は目線を外した隙に一瞬で全裸になる。
サブタイトルは白(もしくは銀色)。これは、おそらく休憩も込めた息抜き回。

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図13. サブタイトルは白(銀色)。「十四松と研究」

とんねるずのみなさんのおかげでした」のワンコーナー、「博士と助手〜細かすぎて伝わらないモノマネ選手権〜」の博士と助手のように見えなくもないおそ松と十四松の掛け合い。
デスクの上に置いてある1988というノートはおそ松くん第二作目のアニメの放映開始1988年を髣髴とさせるが、その下のノートが1968*17に見えるため、アニメ第一作が1966~1967年であることを鑑みると、無関係かもしれない。

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図14. 「十四松と研究」内、デスクの上の日誌(?)。1988と、1968の文字

この後に挟まるアイキャッチが、新品の十四松(DVD&Blu-rayの第一松に収録、「童貞なヒーロー」の十四松)であることから、スタッフ回なのかな、尺が余ったのかな、という感じ。

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図15. 「十四松と研究」後のアイキャッチ、新品の十四松*18

十四松パン

ベッドの上で日々のつまらなさを嘆きどこか遠く夢の国に行けたら良いのにと言うトト子のもとに、十四松パンとティンカーイチがやってきて、夢の様な場所(藤井寺球場跡地、岡山県日本原、ドミニカカーフアカデミー)に連れて行く。ドミニカで現地解散する十四松パンとトト子。
サブタイトルは輝く黄色。明らかに他のサブタイトルと比較して輝いており、これが十四松の夢(夜観る方の夢)ではないかと推測できる。

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図16. サブタイトルは輝く黄色。「十四松パン」

大好きなトト子ちゃんがつまらないと言っている時にさっそうと現れて、夢の様な場所に連れて行ってあげるという十四松の夢。一松(ティンカー・イチ)も、文句を言いながらもついてきてくれて詳しい解説もしてくれる。

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図17. 「十四松パン」内、松ぼっくりの衣装を身に着け、むくれるティンカー・イチ

少し恐ろしいことに、これが十四松の夢だとすると、トト子ちゃんの反応は完全に想定内であり、それでいてなお嫌がっていることには気がついていない可能性がある。(夢であれば、「ありがとう十四松パン!」と感謝されても良さそうである)

なお、良く聞くとわかるが、「ドミニカカーフアカデミー」と発音しており、門の横と思しき部分にある名前も、「HIRASHIMA TOYU CARF」となっている。ひ「ら」しま とー「ゆ」ー かー「ふ」。

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図18. 「十四松パン」内、門柱のドミニカカーフアカデミー

もちろん、本物(?)は、Hiroshima Toyo Carpである。*19

十四松と薬

十四松がデカパン博士にホームランを打つためドーピングして欲しいと頼み込む。尻に注射を打たれ結果は狸の睾丸八畳敷の十四松。
サブタイトルは赤。つまりおそ松である。

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図19. サブタイトルは赤。「十四松と薬」

おそ松の好きなシモネタであり、特にオチは無い。十四松楽しそうだね、というぐらいのものか。
よくよく考えると、おそ松さんの十四松特集回なのに、シモネタがほとんど無いというのは特筆すべきことかもしれない。*20

十四松

ベランダで遊ぶ十四松を眺めながらおそ松は十四松がいつからあんな感じになったか兄弟会議を開催する。アルバムをめくって行くと高校デビュー(十四松デビュー)していたことがわかるが、生まれたばかりの六つ子の写真の一番右端には既に十四松が写っていた為、飲みに行くことにする。
サブタイトルは普通の黄色。

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図20. サブタイトルは黄色。「十四松」

これは、十四松が十四松であるということなので、つまりこれが通常回という現実(?)である。
締めくくりとしてアルバムを観るのは、オチとしては素直で好感が持てる。

エンディング

もはや祭りも終わりと、松明を持った十四松たちが、夜の闇に消えていく。

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図21. エンディング内、赤々とした松明6本

最初に赤々と燃える松明6本をしっかりと印象づけて、その後、遠くに消えていく様を見せることで、深い静寂の中に視聴者を取り残す。

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図22. エンディング内、消えていく十四松たち

おそ松もカラ松もチョロ松も一松もトド松もおらず、全てが十四松となって行ってしまう。
後には誰も残らず、視聴者だけが置いて行かれる。

祭りの後

十四松まつりで描かれた十四松は、実は十四松本人ではなくて、いわば兄弟たちそれぞれの十四松であり、それはある意味で兄弟それぞれの分身であるということがお分かりいただけただろうか。
「十四松と概念」から出発した十四松を探す旅は、人はその人だけでは存在できないという、ごく当たり前の結論に帰結したとも言える。その意味で、人の数だけそれぞれの十四松が居て、どの十四松が間違っているわけでも、どの十四松が本物なわけでもない。
長く一緒にいる家族であっても知らないことは多いし、相手の心の中まで完全に把握しているわけではないので、そうそう思った通りの反応ばかりが返ってくるわけでもない。
一緒に遊べる楽しい弟かもしれないし、相手をしてくれる優しい弟かもしれないし、予想外の場所にいる野球好きの弟かもしれないし、心許せる弟かもしれないし、お節介で意味の分からない兄かもしれない。人は、その人単体で存在することはない。誰かと関わって初めて、その人となりが鮮やかに浮かび上がる。

あなたの心に、十四松はどう映っただろうか。

蛇足

そういえば、月刊MdNでおそ松さん特集が組まれるみたいだけど、予約はもうした?

グラフィックデザイン(昔はWebデザイン)の専門誌、月刊MdN4月号でおそ松さん特大特集59ページなんだよね。ここはイラストメインなので、たぶん情報量はほどほどで華やかな紙面になるような気がするけど、色彩設計について触れたりしてくれないかな……

*1:テレビ東京系列アニメ おそ松さん #17 十四松まつり 「おそ松さん」製作委員会 赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会  よりトリミングして引用。以降本エントリー内では、特段の注記がない限り、同作品#17内より引用

*2:チョロ松は作劇上観客である我々が感情移入しやすいようにツッコミ役になっていますが、彼も同じ

*3:街一個消し飛んでいないので、爆弾処理的には成功している

*4:この後のアイキャッチも、カラ松と歌っていた時の服装

*5:ベースボール

*6:ボールを受ける人

*7:バッテリー

*8:早慶戦

*9:スイッチヒッター

*10:強打者を抑えるため一度体に近い所に速球を見せて状態をのけぞらせる執拗なインコース攻め

*11:チョロ松が野球について的確にツッコめるというより、的確にツッコめることだけを十四松がしゃべっていると考えたほうが自然

*12:手元にドラゴンボールの単行本がないので引用はせず。各自ググろう!

*13:パチンコ玉をせっせと集める兄弟の中、カラ松だけが両手を振り回して十四松を案じている

*14:映像としては、十四松が一松のモノマネをする

*15:『自我とか自己認識とか存在意義とか、案外ちっちゃくてどうでも良いことなんだ』

*16:このペアは今後、「数字松」ではなく、「±松」と表記されるようになるのではないか

*17:196と、89のいずれかの丸が見えている

*18:

おそ松さん 第一松 [Blu-ray]

おそ松さん 第一松 [Blu-ray]

*19:やはり怒られることを恐れてだろうか……

*20:なお、5年後10年後のことを考えてあえて記すが、おそ松さん第17話はテレビ東京系列にて2016/02/02(火)1:35(月曜深夜1:35)に放送されたので、2016/02/02(火)20:48頃に覚せい剤所持で元プロ野球選手が逮捕された件とは直接には無関係