ねむい季節

今の季節はねむいですよね

topisyuさんの本の売り方に、新しいお礼の形とブックレビューの未来をみた話

ぼーっとしている人が「自分の人生と向き合う」ためのQ&A30」は、最初99円で販売されて、その後250円に値上げされたんだけど、最初に飛びついてくれる人をアーリーバード(early bird*1)と呼んで割引価格にするっていうのはクラウドファンディングなどでもお馴染みの手法です。
このアーリーバードが読んで面白かった時にブログで紹介すると、実質的にかなりのお得感が得られるというのは、すごく良くできた仕組みだな!という話をこれからします。

お断りとお詫び。感じ悪く読み取れたとしたら私のせいです。

最初にお断りしておくと、id:topisyuさんが狙ってこの値上げをしたかは判らない。

(引用注:『2.他のブログやTwitterでどれだけ紹介してもらうか』を受けての文)
2の他の人にどう紹介してもらうかについて。これは紙の本と同じで、影響力がありそうな人に献本をしたり、twitterでの好意的な感想をRTするのが効果的だと思います。自分はそこをあまり意識しておらず、ほとんどしていませんでした。まさか、自分のブログの読者以外の人が買われるとは思っていなかったので。
発売から20日で2000部売れた電子書籍作成で得られたノウハウ ~本当はKADOKAWAセールが一番怖い~ - 斗比主閲子の姑日記 購入経路別対策 ~献本、Amazonのレビュー依頼~ より

恐らくは、上記引用部の通り、自分のブログの読者に向けての書籍化を念頭に置かれていたのだと思うので、「topisyuさんが直接紹介→ファンが購入」以外の経路に関しては、おまけ程度(もしくは、どうなるか実際にやって見てみよう)と考えられていたのではないかと思う。

本を紹介すると、お礼される?

知っている人は当然のように知っているんだけど、まあ簡単に振り返り。
小売店の商品を紹介してその結果売れると、紹介料が貰える。
これをアフィリエイトと言い、Amazonで本なら3%の料率。

「怒り」がスーッと消える本―「対人関係療法」の精神科医が教える

「怒り」がスーッと消える本―「対人関係療法」の精神科医が教える

例えば、上記の形で、「topisyuさんもオススメされていました!自分もオススメです!*2」と紹介して、どなたかが上記のリンクから購入すると、販売価格1404円の消費税抜き1300円の3%で、39円の紹介料が貰える。
まあ、正直1冊販売して40円の手数料なら、ちょっとブログで紹介して2,3人が運良く買ってくれるかな?という期待で何かを書くというモチベーションにはならないだろうし、貰って嬉しくないわけではないけど「ああ自分のおすすめで買ってくれたんだ」という精神的な満足感のほうが強いだろうと思う。
3冊売れて117円だし、ジュース買うにも足りないしね。

値引きされたと感じるには

例えば、1404円の本を買って、39円値引きと言われると、なんかこう、微妙だろう。嬉しいけど。
これが、99円の本を買って、7円の値引きと言われると、どうだろうか。まだ微妙だろう。*3
さて、じゃあ99円のKindle本を買って、面白かったのでブログで紹介をした。
書影(本の表紙)を画像で紹介しようとするとAmaon便利なのでそれで紹介した。
知り合いが買った時は、250円になってたとする。すると、紹介料は18円になる。
自分の紹介で3冊売れると、54円だ。

ん?99円で買った本を紹介すると、3人が買ってくれたら紹介料が54円になるの?
それって、実質的に半額になったのと同じなのでは?

つまり、Amazonアソシエイト紹介料率操作

これ、Kindle本紹介料率8%*4が、紹介した人が買ってくれた価格の8%という部分にカラクリがある。
2.5倍の値上げが実行されると、1冊の紹介料が20%に設定されたのと、同じ効果になる。

これが、プロアフィリエイター向けではない、紹介のお礼になる理由

99円から250円と2.5倍の値上げになることで、紹介のインセンティブ*5が高まるのは間違いない。

f:id:syunsyo:20160120202716p:plain
発売から20日で2000部売れた電子書籍作成で得られたノウハウ ~本当はKADOKAWAセールが一番怖い~ - 斗比主閲子の姑日記 20日で2000冊のまとめ より転載

年末年始に読んで紹介した可能性が高いので、この「他ブログでの紹介」で売り上げのあった数百冊(ここでは100冊とする)は、特にそれを狙ってだとは思わないが、計算してみるとこうなる。

  • 値上げ前:99円の紹介料が7円 × 100冊 = 700円
  • 値上げ後:250円の紹介料が18円 × 100冊 = 1800円
  • 紹介タイミングで、1100円の差になる

単純に、紹介料が2.5倍になるのだから、それは間違いなく嬉しい。
だが、プロがやるなら最初から価格の高い本を紹介すれば良い。
(例えば、さっきの「「怒り」がスーッと消える本―「対人関係療法」の精神科医が教える*6」のKindle版は991円で、紹介料は73円になる。紹介で1/4の25冊売れれば1800円を越える)

販売価格の絶対額が低いので、アフィリエイターのインセンティブとしては、弱い。
だけど、最初に買ってくれた人がブログで紹介までしてくれて、さらにその紹介のおかげで自分のブログ経由では届かなかった人にも届いた。これに応えたいので20%値引きします!というのは、情緒的にも金銭的にも理にかなっていると思う。

しかも、儲けているという後ろめたさが無い

ブログでお金を儲けるというと、忌避感が強い人も居る。
でも、これに対しても絶対額が低いことが、後ろめたさを解消してくれる。

表.250円のKindle本の紹介料

紹介数(冊) 紹介料(円)
1 18
2 36
3 54
4 72
5 90
10 180
20 360

確かに、5冊で元が取れてしまうというのは、チョット後ろめたい。だが、20冊紹介しても360円だ。
儲けた儲けたガッポガッポ、とは言えないし、これぐらいなら後ろめたさを感じない。
お得にお買い物はしたいけど、ガツガツ稼ぐのはチョット……という人にも優しい。

まとめると

アフィリエイトは、Web世界の広告の形を変えてしまったと思う。
正直に言って、本当にオススメのモノだけが紹介されているとは、とても思えない。
でも、中身を斜め読みした広告屋さんによる紹介ではなく、本当のファンの紹介なら読みたい。
そうしたファンが後ろめたさを感じずに、紹介で本が割引になると言う仕組みは、とても良いと思う。
しかも、インセンティブ設計として、儲からないが紹介して嬉しいという絶妙なバランスになっている。

KDP*7本の様な玉石混交の素人出版本の世界では、最初に買って中身をレビューするアーリーバードは、著者にとっても後続の読者にとっても、非常にありがたい道先案内人になると思う。
瓢箪から駒ではないが、これは素晴らしい紹介モデルの形になるのではないかと思う。*8

この、「この本ツマンネエわ。嘘でも良いから元取るか」としてブログ書いて買わせるには紹介料が少なく99円程度なら書かないほうがマシ、でも「この本オモシロイわ!紹介するわ!」としてブログに書いて紹介すると、1冊売れる度に20%割引になるわ売れまくっても儲からないので後ろめたさゼロだわって、ほんとうに絶妙で良く出来てて、今日は非常に良い夢が見れそうなのでおやすみなさい。

*1:The early bird catches the worm(早起きは三文の徳)などのように、素早く動いた人の意

*2:この本は本当にオススメなのでtopisyuさんのレビューを読んでから買うのがオススメです「何で私をイライラさせるのか。そんな「怒り」をスーッと消すための本 - 斗比主閲子の姑日記

*3:Amazonアソシエイトでは、本は3%の紹介料だけど、Kindle本は8%の紹介料になっている

*4:税抜き&1円未満切り捨てなので、実質7.2%程度

*5:その行動を行わせる魅力

*6:繰り返しになるけど本当にオススメなのでtopisyuさんのレビューだけでも読むべきです「何で私をイライラさせるのか。そんな「怒り」をスーッと消すための本 - 斗比主閲子の姑日記

*7:Amazon Kindle Direct Publishing。Kindle本の自前出版

*8:Amazonアソシエイトは500円貯まらないと支払われないので、250円本だと28冊も紹介が必要なのが実に惜しい