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ねむい季節

今の季節はねむいですよね

そう言われて見れば!をほんのり皮肉げに、『ぼーっとしている人が「自分の人生に向き合う」ためのQ&A30 [著]斗比主閲子』

ぼーっとしている人が「自分の人生と向き合う」ためのQ&A30

「だろう」を変えるファーストステップ。具体的なアクションの入門

首都圏では雪が降る度に、電車の遅延や駅での行列がニュースを騒がせる。
振替輸送先でさらに振替輸送されて、最終的にバスが立ち往生してからメールで出社待機を受け取るなんていう話も、数年に一度のアトラクションだと思えば、腹が立つより笑い話だ。
しかし、これが自分の運転する車となると、笑えない話になる。
いつもと同じだし、あの自転車を追い越してもまっすぐ走る「だろう」。
こちらは直進だし、あの右折車は当然止まる「だろう」。
あの子どもは横断歩道をすぐに渡り切る「だろう」。
そうした「こうして欲しいな」という願望は、普段は意識することもない。
自転車はまっすぐ走り、右折車は待ってくれ、子どもは横断歩道を渡り切る。
しかし、雪が降った次の日なんていう機会には、その「だろう」は悪夢になる。
自転車は追い越す直前になって、ちょっとした雪に滑って車道に転がり出てきて、
右折車はこちらが直進するタイミングで、反射した朝日に気を取られてそのまま曲がり、
横断歩道を元気に渡っていた小学生は、こちらが左折し始めると転んで姿が見えなくなる。
どんなに毎日が変わらなくても、自動車を運転する人が絶対に忘れてはならない、注意の姿勢。
「かもしれない」という意識は、自動車教習所で右から左に聞き流して良い言葉では無い。

これが、こと人生となると、「だろう」と思っていることが突然増える。
不倫をしていても結婚できるだろう。結婚すれば幸せになれるだろう。待っていればいつかうまく行くだろう。「そのうちなんとか、なるだろう*1」というのは、いつの時代も強烈に人を惹きつける。
そんな誰もが少し憧れる、楽観的な希望的観測を、『人生をぼーっと生きている』と冒頭でハッキリ言ってしまうのが本書『ぼーっとしている人が「自分の人生に向き合う」ためのQ&A30』だ。

著者の斗比主閲子は、『お悩みについてサクサク、バッサリ回答しています!』と快活に自著を宣伝しているが、最初から最後までバッサリいかれるのは読者である。人間関係で7つ、男女で7つ、心理で7つ、仕事・お金で9つ。それぞれのQ&Aを読んでいると、何をムシの良いことを、と思う質問もあるが、思わずハッとする質問もある。そして、そのどれにも明快な論旨でサクサク回答が付けられている。
周りの友達は馬鹿ばかり、どうして友達に恵まれないのだろうかという質問に、それはおまえが馬鹿だからだとバッサリ一刀両断にする。友人関係には共通点が必要だ、親しみを感じて友だちになろうとするのは共通点があるからだ。自分の友だちが馬鹿に見えるなら、自身がその程度の人間だと言うのは解るだろう?とあくまでも丁寧に畳み掛ける。しかし、バッサリ切って終わりではなく、いま不満があるならそれは変化の時だ、さあ一歩踏み出そうと優しく語りかける。こうして書いてみると、最初に転ばせ次に切りつけ最後に薬を塗って去っていくカマイタチの手法だが、自分から問いを発している分、悪神に行き合ったという言い訳は通るまい。
もちろん、サクサクバッサリで片がつくほど人生は単純ではないし、人それぞれ事情もあるだろう。しかし、ナタでもってバッサリバッサリ下枝を払って道を作らなければ、前には進めない。藪の中でぼーっとしていれば人生の夕暮れはあっという間で、気が付くとあたりは真っ暗になっている。そうしてから何かを始めても、それはもう遅いのだ。
なんとなく不安を抱えた人がこの本を読むと、他人の悩みが書き下されてアクションが定まる様子を追体験できる。そして、自分の不安も同じように対処可能なのではないかという、まさに人生と向き合う第一歩が踏み出せるようになるだろう。
ただし、表紙の可愛らしいナマハゲのようなモノが大ぶりのナタを振るうような荒療治の追体験なので、ぼーっとしている人ほどご用心。

紹介書籍及び著者情報

『ぼーっとしている人が「自分の人生に向き合う」ためのQ&A30 』
Kindle ダイレクト・パブリッシング TOPISYU新書 250円 斗比主閲子 1976年生まれ。某企業のIR部門に所属。2.5世帯住宅で、X人目の子育て中*2。一般向けではないブログ『斗比主閲子の姑日記』で知られる。アカウント名及び自称はid:topisyu
*3

*1:映画「ホラ吹き太閤記(1964年東宝 古澤憲吾監督)」主題歌「だまって俺について来い」の有名な一節

*2:ということになっている

*3:新聞書評風にお送りしました。引用してみっちりレビューしたいけど、今日はおやすみなさい